2018年3月7日 (水)
京都の三条通りの近代洋風建築群、その魅力に迫る・・その2
2月末に続いて、先週の土曜日の午後、講演会とパネルディスカッションがありました。
場所は京都文化博物館の別館(旧・日本銀行京都支店;重要文化財)のホールです。
この建物は、明治39年に辰野金吾の設計によって建築されました。
東京・日本橋の日銀本店、大阪・中之島の大阪支店に比べ、京都支店は優雅な造りになっています。
辰野金吾は東京駅も設計しレンガ建てに白いボーダーラインがある「辰野式」は有名です。
いよいよ講演会が始まります。
神山副館長(文博)のご挨拶です。
◆笠原助教授(京都工芸繊維大学)の講演
三条通りは東海道の西の起点ですが、明治・大正期は洋風建築が立ち並び近代化が進みました。その保存方法がそれぞれユニークで、日本銀行京都支店やSACRAビルは丸ごと保存、中京郵便局は日本最初のファサード保存、日本生命ビルは部分保存などです。
200人位の満員の聴衆で熱心に聞いておられました。
家辺徳時計店(明治23年築)
かつては建物に時計台があったが撤去。近世の町家から洋風建築への途上のもの。
◆次は、嘉名教授(大阪市立大学大学院工学研究科教授)の講演
「イケフェス大阪」(生きた建築の可能性)について
大阪を「生きた資産(リビング、ヘリテージ)」と捉えその素晴らしさを味わいながら次世代へ託していく・・
この大阪の壮大なフェスティバルの企画は、最初、大阪市立大学、そして、大阪市、さらに現在は実行委員会が運営し大きな大阪のイベントになっているとのことです。
ビルの演劇だそうで、前列の左は大阪ガスビル、後列の真ん中は大阪駅の排気塔で嘉名教授が出演です・・・大阪のノリですね。
講演会場の日銀京都支店の構内
嘉名先生の大阪弁の盛り上がりに聴衆は和やかに聞き入りました。
いよいよパネルディンカッション・・小生も出番です。
司会は笠原先生、パネリストは、左から嘉名先生(前述)、小生(SACRAビル)、若林さん(1928ビル)、村野さん(京都文化博物館)、森本さん(後述)
小生はSACRAビル(旧・不動貯金銀行;下の写真)の特徴、所有者の変遷、商業利用の在り方を話しました。
SACRAビル(ツカキ(株)所有 1916年築)
若林広幸さん、1928ビル(旧・毎日新聞社京都支局;下の写真)のオーナーで、有名な建築士さんです。
旧知の若林さんの情熱、苦労話は大変に興味深い話でした。
小生は、「京都・国登録文化財所有者の会」会長を拝命しており、「文化財の維持の苦労話と要望をしてほしい」との質問があり、京都の文化財所有者の高齢化・相続問題の重要性を述べました。
古い建物の固定資産評価は低いが、土地は高い評価のままで、固定資産税や相続税が高額になり大変な現状を訴えました。
京都市内でも登録文化財がたえかねて解体をされる例が出てきています。
江戸時代末の慶応年間創業の平楽寺書店(京都・築90年)が昨年に解体されました。
聴衆も驚いて危機感を共有して頂きました。
広い日銀のホールは熱気に包まれていました。