2021年9月21日 (火)
日本の素敵な工芸品(陶磁器 編)
“秋”と言えば、稲穂の実り、柿、紅葉・・・私の好きな逸品を紹介します。
◆柿右衛門の香炉です。
有田焼、濁手菱文・・・十四代、酒井田柿右衛門(人間国宝)
焼き物の蓋物(ふたもの)で、蓋(ふた)と身をピタリと合わして作るのは難しいものです。
実は、この香炉は名人の柿右衛門先生の作品ですが香炉のフタがちょっと大きく、フタがちょっと浮いていました。
粗忽な小生は、香炉を動かすときにフタを落としてしまい、木っ端みじんに割れてしまいました。
さて、蓋のない香炉ではみっともない、そこでフタの代わりにホヤ(火屋)を作ることとしました。
これがその作品です。
ホヤは純銀製で新品の時はピカピカでしたが、適当に硫化(さび)して、黒くなり味がでてきました。
すべて「塞翁が馬」(思わぬ失敗が幸いを招く)であります!(^^)!
◆濁手三方割り花文(蓋物)
同じく、十四代の柿右衛門先生の作品です。
「濁手」(にごして)というのは、磁器のピカピカ感がなくミルキーな白濁した「白い下地」のことです。
柿右衛門様式のひとつで、白場を光沢の乏しい濁手を特徴とします。
「柿右衛門展」をギャラリーで開催されていた時、ピカピカした綺麗な大壺を前にして、柿右衛門先生(十四代)はスピーチをしました。
「磁器には美しいものと綺麗なものがあります。この壺はさしづめ綺麗な壺でありますが、本当に美しいものは控えめで釉薬で描かれた絵が引き立つ濁手にあると思います。」
メイン展示の柿右衛門の大壺がまるで「綺麗なだけ・・・」と言われたようで、画廊の外商部員はずっこけましたが、愛好家は納得して誠実な柿右衛門さんの話に聴き入りました。(故人)
この「三つ割り」は、3つの季節の花が描いてあり、正面を向ける花によって季節感が変わります。
◆同じく、有田焼の井上萬二(人間国宝)の白磁、百合口花瓶
井上萬二先生は、柿右衛門窯で白磁をつくる職人でした。
一躍、雄飛してアメリカにわたり、白磁の技を完成させ破竹の勢いで自分の芸術領域を完成しました。
その造形の美は大したものですね。
伝統の有田焼にあって異色の偉人といえましょう。
◆備前の藤原雄(人間国宝)の大きな偏壺です。
藤原雄は父の藤原啓(人間国宝)の長男ですが、生まれつき片方の目の視力は大変弱く、しかし、父は厳しい人で、健常者と同じ学校に通い雄は大変に苦労しながらも腕を上げていきました。
備前焼の独特の味を完成させ、父と同じ人間国宝となりました。(故人)
◆次は清水焼の染付です。
寿桃小形水注、五代目 三浦竹泉
可愛い桃の水差しですね。
三浦竹泉先生の清水(きよみず)のお宅に訪問して色々な作品を見せて頂きました。
南蛮文様や清水らしい色々な作品のレパートリーの広さ(染付、赤絵、金襴手など)があり驚嘆したのはいい思い出ですね。
当時、小生は南蛮美術に興味があり、南蛮(戦国時代のポルトガル人)を絵柄にした竹泉先生の作品に惚れて色々求めました。
◆最後は薩摩焼の骨とう品(江戸時代)です。
金高盛香炉
大きな香炉で、薩摩独特の金を盛ったような焼き付けで趣向があります。
お寺ででも使えそうな大きな香炉で、非常に華やかですね。