2023年2月13日 (月)
有名人「甲斐荘楠音」ってだれ?
小生の毎日の散歩コースに京都国立近代美術館があります。
こんなポスターが貼ってあり、妙に気になっていました。
2月11日(祝日)が開幕でしたので、初日に行ってきました。
「甲斐荘楠音」(かいのしょうただおと、1894-1878)は、京都生まれで旗本9500石の大身の家系で京都御所の近くで裕福に育ちました。
病弱に育ち、のちの京都市立芸術大学に入り日本画を学びました。
戦前に京都画壇の新人として話題を集めた「横櫛(よこぐし)」(写真はカタログより)
彼は「理想の美」を描くのではなく、美醜相半ばする人間の生々しさに迫りました。
独特の感性で性的マイノリティといわれています・・・
戦後は映画業界に没入し、「旗本退屈男」「新吾十番勝負」などの時代考証、衣装などに腕を振るいました。
実は、「新吾五十番勝負」は朝日新聞の連続小説(川口松太郎作、1957-59年)に掲載され、祖母は熱烈な愛読者でした。
徳川吉宗将軍の隠し子・葵新吾が主役の活劇ドラマで、映画化がされました。
10歳の私は祖母と二人で映画を見るために、五個荘からバスに乗り都会の八日市市の映画館へ行きました。
私の人生で怖い祖母と二人で映画に行ったのは、「新吾十番勝負」が最初の最後でした。
「雨月物語」(監督;溝口健二)は。アカデミー賞(甲斐荘楠音は衣装デザイナー賞)にノミネートされ、ヴェネツィア国際映画祭では最優秀賞を獲得しました。
2019年、パリで“映画「旗本退屈男」幻の衣裳展”が開催され、パリっ子に大人気を博した。
カブキを彷彿させる旗本退屈男の衣裳に熱狂したのでしょうね。
甲斐荘楠音は、1世紀前に日本画家として活躍し、映画人として半世紀以上前に活躍したひとでありますが、その輝きは今も燦然としています。
彼は旗本の大身だった家柄だけに、徳川への愛着と自分の身代わりが「旗本退屈男」だったのかも知れません。
溝口健二監督は、甲斐荘楠音の気風・底知れぬ教養・倒錯趣味の虚脱感・奔放さを愛したのでしょうね。
甲斐荘楠音は、歌舞伎、演劇などに没入し自らも演じた趣味人でありました。
虹の架け橋「七妍」
花魁(おいらん)を中心に妍を競う遊女たち・・・竹林の七賢人を揶揄(やゆ)しているようです・・・
「若い頃は描く人」、そして「こだわる人」、戦後は「越境する人」(絵画、演劇、映像へと変幻自在に移り行く・・)
京都国立近代美術館開館は1963年(60年前)に設立されましたが、その頃、甲斐荘楠音は晩年でしたが彼の異才に目を付け、京都国立近代美術館は彼の作品を沢山収集しました。
今回も当美術館の収蔵品が多く、甲斐荘楠音への深い理解と愛着を感じる展示でした。
(会期;2月11日~4月9日、am10~pm18、休館は月曜日、入館料は1800円)
甲斐荘楠音・・・私より50歳上の方でありますが、美術館のポスターの印象は、「怪奇で俗っぽくて気になる・・・」でした。
しかし近代美術館で作品を鑑賞して、なんとも懐かしく、彼の明治時代の教養と反逆精神、戦前戦中のどさくさ、戦後の闇市のような泥々した俗っぽさとエネルギーを感じました、
開幕間もない京都国立近代美術館のスタッフは「甲斐荘楠音にポップアートな日本的精神性」を感じたのでしょうね。
夕暮れ迫る京都国立近代美術館(上)とその前にある京セラ美術館(京都市立美術館)
でっかい赤い鳥居は平安神宮の大鳥居です。
この鳥居から、歩いて4分で我が家です。
美術館にお越しの節はお遊びにお立ち寄りください。